紫苑色の呼び声

ここは私の小さな神殿。

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夜が好き。みんな夜には家に帰るから。家以外のものはみんな空席になる。独り占めだ。人が居ないとどこも寂しくなる。廃墟の気分の良さは人が居ないことによる独占や人間を厭わなくて済む気楽さから来るものじゃなくて、人間を懐かしむ心から生まれるものだ、きっと。でもやっぱり心に干渉するものが非常に少ないのは心地いい。ずっと夜で涼しくてひとりぼっちならいいのに。でも寂しくないのは遠くで人間の生きる音が聞こえるからだ。これくらいの距離感で人間と関わるのがきっとベストなんだ。人間は甘美な毒物なので。甘い犯罪みたいな締め方になるのすごく嫌だな。